サークル見学に行ってきました
サークル見学に行ったら部室で鍋パしてたので帰った話
実家からアパートに帰る途中の車がエンストして、結局車をレッカーで牽引し、タクシーで何千円も払って自宅まで帰りました、ぼえもです。
夢の大学生活。まだまだ授業には慣れませんが、少しだけ緊張が解れてきました。
そこで目についたのは、学内に除霊でもするのかというほど貼り巡らされたサークル勧誘のチラシ。
踊り場という踊り場に貼られまくっているチラシを見て、憧れのサークル活動というものに参加してみたくなりました。
新入生歓迎会で手に入れた「放送研究会」のチラシを握り締め、緊張を抑えつつ、鼻息は荒く、いざ、サークル棟へ足を踏み入れました。
大学のサークルといえば、アニメの世界にしか存在しないようなバラ色の活動。
イケメンや美少女、宇宙人や超能力者が渦巻いているに違いありません。
チラシによると、「放送研究会」は、3階の最奥地に存在しているようです。
薄暗い廊下を抜け、部室に近づくと、何やら楽しそうな声が聞こえてきました。
「これはきっと賑やかで素敵なサークルだ!」と、はやる気持ちを抑えつつ近づくと、明らかに良い香りがします。
カレイの煮付けのような、お醤油風味の日本料理の香りです。
夕飯時の空きっ腹には堪らない香りが、コンクリート剥き出しの薄ら寒いサークル棟に漂っています。
わいわいと聞こえてくる楽し気な声と、漂うカレイの煮付け。
明らかに、部室で何かを食べています。
大人数でカレイ的な、煮付け的な何かを囲んでいます。
そんな楽しい時間に、チラシを握り締めた鼻息の荒いゴリラ女がやってきたらどうでしょう。
きっと、カレイの香りにつられて迷い込んできたゴリラだと勘違いされて、猟銃で撃ち殺されてしまうでしょう。
もしくは、部員水入らずの煮付け大会を放り出して、先輩方が裸足で逃げ出してしまうかもしれません。
そうなってしまうと、もう私も、素手でカレイを鷲掴みにしながら、全裸でテーブルの上で食うしかありません。
そんなことになってしまうと、夢のサークル活動が遠退いてしまいます。
しかし、その間も楽し気な声とカレイは止まりません。より一層の盛り上がりを見せています。
見学したいが、ゴリラが来訪してしまうのも悪い…。
散々悩んでいると、部室から人が出てきました。
「これは話しかけるチャンス!」と角から様子を伺うと、先輩らしき人が鍋を持っているのが見えました。
カレイの煮付けではありません。鍋です。流行りの鍋パでした。
廊下で2時間悩んで得たのは、部員が何を食べているかの答え合わせだけでした。
カレイの煮付けではなく鍋だったということがわかり、どこかスッキリしました。
もうすっかり、中庭には夕陽が射して、空には涼し気な風が吹いています。
夕方の風のように清々しい気持ちのまま、私はサークル棟を後にしました。
また別日に、鍋の具材を持って訪問してみたいと思います。